土地を評価できない税理士はNG
不動産評価能力がプロとアマの分かれ目
相続税をうまくさばける税理士かどうかの分かれ目では財産評価能力です。
評価が難しいのは、ズバリ一物四価ともいわれる土地です。
現金・預金は額面通りの価値だし、有価証券も相場で価値が決定されます。
美術品なども専門家の鑑定でおおむね評価が収束します。
しかし、土地は一筋縄ではいかないのです。
不動産評価はものすごい知識と経験が必要で、不動産鑑定士の協力が必要な場合も多いので、たいていの税理士は逃げてしまいます。
しかし、ここをしっかりやらないと大損するばかりか、最悪は相続税を払いきれなくなる危険すらあるのです。
路線価で評価すると大変なことになることも
税務署は土地の評価に「路線価」というものを使います。
国税局が出している、面している道路ごとの宅地の価格目安のことです。
財産評価基本通達という税務職員のマニュアルに、評価は路線価でしなさいと書かれています。
だから税理士は土地の評価を路線価でやりたがります。
簡単だし、税務署と同じ基準ならもめにくいからです。
しかし、土地の実情は路線価と大きく違うこともあります。
実際に現地に行き、役所の資料も調べると、路線価とかけ離れた価値の低い土地だったということがよくあります。
住宅の新築が許可されないとか、近くにゴミ処理場があって嫌われる土地だとかです。
こんな土地に路線価にしたがった評価で相続税を払ったら、大損です。
それどころか、さらにまずい事態もありえます。
相続税の納税資金が工面できないので土地を売った。
すると実勢価格は評価額よりはるかに低く、売却代金は相続税でチャラとなり、財産なしになった。
あるいは売却代金は相続税額を下回り、借金ができた。
あるいは、まったく土地の買い手がつかず、巨額の借金を背負うことになった、など。
路線価は基本ではありますが、他の角度からもチェックし、必要に応じて不動産鑑定士も入れて評価の低減をはかるべきなのです。
現地調査と役所調査
そうした補完的な調査方法が、現地調査と役所調査です。
現地調査は、文字通り土地の現場を見に行くことです。
周囲の環境が良くない、土地の形状が図面と全然違う、などということがあります。
役所調査は、当該地域を管理している役所に出向いて、土地行政について調べることです。
すると、市街化調整区域で建築制限があるとか、新築不可であるとわかることがあります。
ここで例示した事柄は、いずれも土地の価値を著しく下げるものです。
こうした事情がある時に、路線価評価をそのまま使ってしまうのは、依頼者の利益を大きく損なう怠慢な仕事と言わざるを得ません。
このように土地の評価はクセモノです。
経験の乏しい税理士にはさばききれないし、手間と時間もかかるので入り込みたがりません。
やはり、相続税の経験が豊富な税理士を当たるべきなのです。